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2024.07.22 ブログ


こんにちは、井上です。


さて、少し前ですが、テレビで、『オーイ!とんぼ』という、マンガ原作のゴルフアニメが放送されていました(6月29日に第1期の放送が終了しました)。知っている人も多いと思いますが、私も毎週楽しく見ていました。私はアニメやマンガが好きでよく見るのですが、何かを伝えるときに、多角的に、時に時空を超えて表現する作品よりも、単純で、ある程度ゆとりをもって表現するもののほうが好みなようです。そんなアニメやマンガがないかなと思っていたときに出会ったのが、『オーイ!とんぼ』でした。わかりやすくて明るくてまっすぐ。

元プロゴルファーの「イガイガ」が、ある事情で鹿児島県の火之島に移住することになるのですが、そこで出会った少女が「とんぼ」でした。とんぼは幼い頃から遊びでゴルフをしていたのですが、その技術が高く独特。元プロでも舌を巻くほどのものでした。遊びで終わらせるにはもったいないと、イガイガは技術を教え、やがては島の外でプロを目指してゴルフをさせたいと考えるのですが、とんぼは決して島を出ようとしません。(島外への修学旅行も拒否したほどです。)イガイガは、とんぼに広い世界を見せてあげたいと、試行錯誤しながらとんぼと接していくのですが…。と、そういう物語です。

この島には高校がないため、中学生は卒業と同時に島の外に出て高校生活を送ることになります。しかし、島外に出ることを強く拒絶するとんぼには、高校へ行かず、島に残る以外の選択肢はありませんでした。しかし、イガイガや、プロゴルファーを目指す同級生・つぶらとのゴルフの経験を通して、外の世界のゴルフや「これからの人生」と向き合い始めます。島に残りたい思いと外の広い世界のゴルフ、お金を稼いで「ゴンじい」に恩返しをすること、そんな相反する思いの中で揺れ動くとんぼ。

「ゴンじい」はとんぼの保護者代わりの存在です。ゴンじいは、悩むとんぼに気づきながらも、とんぼに何も言いません。相談を促すことも、アドバイスをすることも、ましてや自分の気持ちを伝えることもしません。これまで通り、とんぼと食事をし、朝になると漁に出て、またとんぼと食事をする。
そんなある日、とんぼは、つぶらに影響されて、いつかゴンじいに船をプレゼントしたいと話す。しかし、ゴンじいは、先は長くないからムダになってしまうと苦笑して断る。「そんなさみしいことを言わないで、ゴンじいが死んだら私はどうしたら…」と感情を露わにしたとんぼに、初めてゴンじいは声を荒げて、「ワシが死んだらどうやって生きていくんだ?とんぼはなにをして生きていくんだ」とトンボに問う。



この場面にすごく感動しました。「タイミング」と思いました。教育に携わる者視点になってしまっているのでしょう(笑)中学生に関わる者として、成長を促すべきか迷う場面によく出くわします。言うべきか言わざるべきか。待つべきか待たざるべきか。ゴンじいには言いたいことがたくさんあったに違いありません。しかし、「とんぼのタイミング」を待っていたのでしょう。そして、一番効果的だと思ったタイミングに、それでも答えを言うのではなく、自分で考えさせる一言を放つ。素晴らしい一言、素晴らしいタイミングだと思いました。

若い頃は、自分がこの生徒を変えてやるんだと燃えていた時期もありました(笑)しかし、それは、私の物差しでその生徒を見ていることだということに気づきました。私が生徒と接するのは長くて3年です。この3年に「成長」のタイミングが訪れない生徒も当然います。成長のタイミングは人によって異なります。そんな考えを得てからは、生徒をよく見て「待つ」ようになりました。卒業までそのタイミングが訪れない生徒もいます。そんなときは、心の中で、これから出会う人や家族などに、「よろしくお願いします」とひそかに思っています(笑)
しかし一方で、私が彼らと会う場は、学校ではなく「学習塾」です。成績を上げて志望校に合格させることが第一目的の場です。待ってばかりでは目的は達成できません。

だからこそできるだけ長い時間を、生徒にも私たちにも与えてほしいと思うのです。ゴンじいは家族なのでたくさんの時間がありましたが、私たちには時間割の制限の中で、なおかつ「受験」という期限があります。じっと待っていては間に合わないこともあります。短期間に無理に生徒を変えることは難しいですが、長い時間をかけて、ゆっくりと成長を促すことはできます。短い棒を曲げると折れてしまいますが、長い棒を曲げるときれいな曲線を描き、しならせることができます。教育はそれに似ていると思います。

生徒自身の成長のタイミング、待つこと、受験という期限、そしてその生徒自身が持つ目標。
それらのバランスを見極めながら、生徒と向き合うことがこの仕事の重要な部分だと思っています。

成長のタイミングに出会ったときに、ゴンじいのような効果的な一言が言えるといいのですが。



それでは今日はこの辺で失礼します。


sungrove

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